カテゴリー
社会問題・用語解説

耕作放棄地とは何か?耕作放棄地の現状や対策等について徹底解説

耕作放棄地とは、以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽培せず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地のこと

国内の農地面積が減少する中、耕作放棄地面積率は、平成2年から平成22年にかけて約2倍に増加しています。

耕作放棄地に興味がある人の中には、

こんな悩みをスッキリ解消!

  • 耕作放棄地ってそもそも何だろう
  • 耕作放棄地はなぜ発生するのだろう
  • 耕作放棄地はなぜ簡単に売れないのだろう

等々のことを思っている方も多いと思います。

そこで今回の記事では、「耕作放棄地」にフォーカスしてお伝えいたします。

この記事を読むことで、あなたは耕作放棄地について理解できるようになります。

ぜひ最後までご覧ください。

1.耕作放棄地とは「農林業センサスにおける統計上の用語」

耕作放棄地とは、農林業センサスにおける統計上の用語です。

農林業センサスでは、耕作放棄地を「以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽培せず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地」と定義しています。

農林業センサスとは、我が国の農林業の生産構造や就業構造、農山村地域における土地資源など農林業・農山村の基本構造の実態とその変化を明らかにし、 農林業施策の企画・立案・推進のための基礎資料となる統計を作成し、提供することを目的に、5年ごとに行う調査のことです。

尚、農地法においては、類義語として「遊休農地」という言葉があります。

遊休農地の定義は以下の通りです。

  1. 現に耕作の目的に供されておらず、かつ、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地
  2. その農業上の利用の程度がその周辺の地域における農地の利用の程度に比し、著しく劣っていると認められる農地(①を除く)

耕作放棄地よりも遊休農地の方が、若干広い範囲を指しますが、内容としてはほぼ同じです。

以上、ここまで耕作放棄地の定義について見てきました。

耕作放棄地の現状はどのようになっているのでしょうか。

そこで次に耕作放棄地の現状について解説致します。

2.耕作放棄地の現状

耕作放棄地は、ご想像通り増え続けています。

以下に、全国の経営耕地面積と耕作放棄地面積の過去30年間の推移を示します。

全国の経営耕地面積と耕作放棄地面積の過去30年間の推移

全国の経営耕地面積と耕作放棄地面積の過去30年間の推移

青いラインが経営耕地面積で、左の軸、赤いラインが耕作放棄地面積で、右の軸となります。

経営耕地とは、農家が経営する耕地のこと

耕作放棄地は昭和60年までは、およそ13万haの横ばいで推移していましたが、平成2年以降、増加に転じ、平成22年には39.6万haとなっています。

39.6万haは、ほぼ埼玉県の面積に相当する面積です。

平成27年4月に行われた農林水産省農村振興局調べ耕作放棄地に関する意向調査では、発生原因としては、以下の理由が挙げられています。

  • 1位:高齢化・労働力不足
  • 2位:土地持ち非農家の増加
  • 3位:農産物価格の低迷

最も大きな要因は「高齢化・労働力不足」であり、農業の担い手が減少していることが、そのまま耕作放棄地の増加に繋がっているのです。

以上、ここまで増え続ける現状について見てきました。

では、耕作放棄地が増えることになった社会的背景は何なのでしょうか。

そこで次に、守られ過ぎて衰退した日本の農業について解説いたします。

3.耕作放棄地と農地法

耕作放棄地を不動産として捉えるには、農地法の理解が欠かせません。

農地法は農地を守るための法律です。

農地法第一条には、その法律の目的が以下のように定義されています。

【農地法の目的】

国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もって国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。

少し長いですが、ポイントは2点です。

第一のポイントとしては、農地法は「農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進」する法律であるということです。

「農地の権利を取得」、つまり農地を購入については、「農地を効率的に利用する耕作者」に対して買ってもらうことを促進しているという点です。

農地を効率的に利用する耕作者とは、農業を本格的に行う人ということになります。

つまり、サラリーマンが家庭菜園を目的に農地を購入しようとしても、それは認められないということです。

農地法は、農地を守る法律ですので、農地を農地として売る場合は、自由に売買できそうな気がします。

しかしながら、農地法では、農地を農地として売るにも許可が必要であり、やたらと売ることができません。

農地として売れば、農地は減らないはずですが、農業のやる気のない人に売ってしまうと、収穫量も減る可能性があるため、結果的に農地を減らす可能性があります。

そのため、農地は農地として売ろうとしても、やたらと売却できず、農業委員会の許可が必要となります。

この許可については、農地法第三条に書かれているため、「三条許可」と呼ばれています。

ここで農業員会とは、農地法に基づく売買・貸借の許可、農地転用案件への意見具申、遊休農地の調査・指導などを中心に農地に関する事務を執行する行政委員会として市町村に設置されている組織のことを言います。

第二のポイントとしては、農地法は「農地を農地以外のものにすることを規制」する法律でもあるという点です。

農地を農地以外、つまり建物を建てるための宅地とすることを「転用」と呼びます。

転用には、許可が必要となります。

農地を宅地へと転用すれば、農地が減るため、当然に規制の対象となるわけです。

農地の転用に関しては、「所有者が自分で行う」場合と、「買った人が行う」場合の2つがあります。

それぞれについて、都道府県知事の許可が必要になります。

「所有者が自分で行う」場合の許可は、農地法第四条に書かれているため、「四条許可」と呼ばれています。

「買った人が行う」場合の許可は、農地法第五条に書かれているため、「五条許可」と呼ばれています。

農地法の許可をまとめると、以下の取りになります。

名称 内容 許可権者
3条許可 AからBへ農地を農地として売却すること 農業委員会
4条許可 自分で農地を農地以外に転用すること 都道府県知事または指定市町村町
5条許可 AからBへ農地を農地以外に転用して売却すること

このように農地は、売るにも転用するにも許可が必要になります。

この規制は、農業を止めたい人にとっては、とても厄介な規制です。

現在、農業は就労人口が減っているため、三条許可を取得して買ってくれる人もいません。

さらに四条許可や五条許可によって転用もしにくいということであれば、そのまま放置するしかないのです。

つまり、結果的に耕作放棄地にせざるを得ないということになります。

農地法は、本来、農地を守るための法律ですが、規制でガチガチなっているため、逆に耕作放棄地を増やす原因にもなっています。

農地法の規制により、フリーズ状態となってしまったのが、今の耕作放棄地と言えます。

以上、ここまで耕作放棄地と農地法について見てきました。

では、なぜここまで耕作放棄地が増えるに至ったのでしょうか。

そこで次に都市計画法の弊害について解説します。

農地の売買については下記記事に詳しく解説しています。

農地(田んぼ・畑)売却で知っておきたい売買条件や流れ、手数料・税金を解説
農地(田んぼ・畑)売却で知っておきたい売買条件や流れ、手数料・税金を解説

相続で引き継いだ畑や、実家の田んぼ等、不要となっている農地の処分で困っている人もいると思います。 現在は、農業をやる人が …

続きを見る

4.都市計画法の弊害

農地の身動きが取れなくなったのは農地法のせいだけではありません。

耕作放棄地を増やした原因には、都市計画法も関連してきます。

都市計画法の中では、「市街化を抑制すべき区域」として、市街化調整区域と言うエリアが定められています。

市街化調整区域内では、建物を建てる際に開発許可と呼ばれる許可が必要となります。

許可というのは、要件を満たさない以上、建物を建てることができません。

市街化調整区域は、開発許可を受けられる要件を満たす土地が少ないため、実質的には建物が建てられない土地が多くあります。

すると、市街化調整区域内に農地があると、そこは都市計画法によって建物が建てられないため、農地の転用の可能性が絶望的になります。

例えば農地を購入してアパートを建てようと言う人が現れないということになります。

つまり、農地法の五条許可の可能性が都市計画法によって無くなります。

市街化調整区域内の農地は、転用の可能性が低いため、農地を手放したい人は農地として売買するしかありません。

農業をやりたいという人は少ないため、農地はなかなか売れないということになります。

つまり、都市計画法によっても、農地は放置せざるを得ず、結果的に耕作放棄地となってしまうのです。

市街化調整区域については、下記記事で詳しく記載しています。

売れにくい市街化調整区域の家や土地を売るための方法と注意点
売れない市街化調整区域の家や土地を売却するための2つのポイントと適切な流れ

売るのに難しい不動産の一つに市街化調整区域の不動産があります。 ただし、市街化調整区域といっても、全ての不動産が売却しに …

続きを見る

農地は、色々な法律によってがんじがらめになっています。

固く締めすぎて、その悲鳴の表れが耕作放棄地と言えるのです。

以上、ここまで都市計画法と農地法の弊害について見てきました。

では耕作放棄地にはどのような対策がとられているのでしょうか。

そこで次に耕作放棄地の対策について解説します。

5.耕作放棄地の対策・成功例

耕作放棄地は、法律の悲鳴のような存在です。

ところが、農地法も都市計画法も規制が緩和される方向性は全くありません。

売却も転用もできないということであれば、耕作放棄地を減らすには農業そのものを活性化するしかありません。

現在、農業を活性化する背策には様々なものがありますが、その中で、なんとなく可能性のあるものとして、「農商工連携」があります。

農商工連携とは、農林水産業者と商工業者がそれぞれの有する経営資源を互いに持ち寄り、新商品・新サービスの開発等に取り組む動きです。

農林漁業の1次産業に、製造業の2次産業やサービス業等の3次産業が一体的に加わることにより、農産物に付加価値が生まれ、農業を活性化することが狙いです。

ここでは、参考に成功例を2つ、ご紹介します。

成功例1:遊休農地をコスモス畑に再生(兵庫県篠山市)

平成12年度から市内全農家に対し農業経営に対する意向調査(アンケート)を実施。

平成13年度は、各集落の農政協力員集落アンケートという形で協力願い、耕作放棄地と荒廃地を洗い出し、地図に落とし込む作業及び空き家調査を実施。

平成14年度は、農地パトロール、現地調査等を踏まえ、再生する農地を決定した。

平成15年度は、荒廃農地を復旧する作業に入った。当面は国道沿の農地45aをコスモス畑に復旧。草刈り、排水作業、除草、耕転、播種などボランティアの協力により復旧。翌年度からは、借り手として地元農家に利用権を設定した。

平成16年度も前年と同様に他の荒廃地を選定し30aを復旧した。

※出展:農林水産省「兵庫県篠山市 ~遊休農地をコスモス畑に再生~」より

最初の例は、市民ボランティアによる耕作放棄地の解消例です。

耕作放棄地の発生原因は「高齢化・労働力不足」でしたが、そこを市民ボランティアによって労働力を投入し、解消しています。

人手不足をボランティアで補い、耕作放棄地を解消していく成功例は、比較的全国で多く見られます。

また、ボランティアだけでなく、元小学校校長や元銀行員などの定年退職者を採用し、営利目的で農業を行い、耕作放棄地を解消する成功例もあります。

人手不足イコール耕作放棄地の増加であるため、今後、農業の担い手をどのように確保していくかが、耕作放棄地の減少に向けたカギを握ります。

成功例2:町とJAの連携による観光果樹園化(埼玉県美里町)

県内でも有数の養蚕地帯であったが、価格の低迷、高齢化により、荒廃化が進行。

平成10年度に美里町地域農業開発協議会(町長、町議会議員、農業委員、土地改良区役員、町森林組合長、学識経験者で構成)を開催し、遊休農地解消実践活動として、「観光果樹園100町歩構想」を推進した。

平成11年には美里町地域農業振興実施計画(観光果樹園100町歩構想)を策定し、町、農業委員会、農協、農業改良普及センター等からなる観光果樹園100町歩構想推進協議会を組織した。

5ケ年計画で100haの遊休桑園等を観光果樹園(ブルーベリー、梅、プルーン等)

とする構想で、平成16年4月現在70haの耕作放棄地を解消した。

※出典:農林水産省「埼玉県美里町 ~町とJAの連携による観光果樹園化~」より

耕作放棄地が増加する要因の一つに「農産物価格の低迷」がありました。

この事例では、耕作放棄地を観光農園とすることで高収益化を図り、耕作放棄地を解消した成功例です。

観光農園は、都市部に近い農村地帯なら、成功の確率はかなり高くなります。

都市農村は、観光農園や農業体験学校、障害者の就労の場の提供等、様々な役割を果たすことができ、近年は注目され始めています。

単純な農業だけでなく、観光や農業体験ツーリズム、学校等の要素を加えることで、耕作放棄地は新たな活用ができるものと期待されています。

6.耕作放棄地の売却を検討するなら「HOME4U」「HOME’S」

農地を売却する場合は、農地を扱ったことのある地元の不動産会社に依頼することをオススメします。

農地の仲介には、許可手続きを進めるうえでの経験が必要だからです。

といってもそもそも不動産会社を知らない人も多いと思います。

そこでオススメなのが「

HOME4U

」「

HOME’S売却査定

」です。

二つとも一括査定と呼ばれるサービス。

一括査定とはインターネット上であなたが売りたいと思っている不動産情報・個人情報を入力すると、複数の不動産会社が自動的に見つかり一度に査定依頼できるサービス

一括査定サービスの仕組み

一括査定サービスの仕組み

複数の不動産会社から査定額を提示してもらうことができ、だいたいの相場観を掴むことができます。一括査定の流れとしては下記の通り。

一括査定の流れ

一括査定の流れ

ただ、残念なことに「農地」に対応している一括査定は少ないです。

農地対応でオススメの一括査定が「

HOME4U

」「

HOME’S売却査定

」の2つ。

HOME4UはNTTグループが運営、ホームズは賃貸で有名で安心して利用できます。

特にHOME4Uは、サービス開始19年と一番の老舗で農地に強い不動産会社が見つけやすいです。

まずは「

HOME4U

」を利用してみて、今一不動産会社が見つからない場合は「

HOME’S売却査定

」を使ってみましょう。

1点、申し込み際に必ず農地を入れるようにしてください。

物件を選ぶときに「その他」、すると入力欄が出るので「農地」と記載します。

ただし、やはりHOME4Uを使っても1社しか出てこない事も多いです。

1社だけだと売却活動も苦戦します。

その際は、HOME’S売却査定も併用しましょう。

まとめ

以上、耕作放棄地とは何か?耕作放棄地の現状や対策等について徹底解説してきました。

耕作放棄地は日本の農業の象徴のような存在です。

様々な対策や成功例もありますが、今後も耕作放棄地は増えていくことが予想されます。

Copyright © 2020 不動産売却の教科書 All Rights Reserved.

Source: 不動産売却の教科書

カテゴリー
不動産売却ブログ 社会問題・用語解説

【複製】両手仲介・不動産会社の囲い込み問題の実態と対策を徹底解説!

売主にとっては、どうしても両手仲介が問題となってしまいます。

両手仲介では、売主が囲い込みを受けやすく、損をするのは売主、得をするのは買主となります。

両手仲介の問題が後を絶たないのは、根本的には売主の知識不足が原因です。

知識を持っていれば、不動産会社による囲い込みは、確実に防げます。

こんな悩みをスッキリ解消!

  • そもそも両手仲介って何なの?片手仲介との違いは?
  • 両手仲介だと、どうして売主に不利なの?
  • 両手仲介を防ぐには、どうしたらいいの?

そこでこの記事では、「両手仲介とは」ということにフォーカスしてお伝えします。

この記事を読むことであなたは、両手仲介とは何かということや、売主が取り得る防衛策について知ることができます。

すぐ分かる!本記事の要点まとめ

  • 両手仲介による問題点は囲い込みによりリスク
  • 囲い込みをされると本当は高く売れる可能性を潰すことになる
  • 大手不動産会社ほど両手仲介比率が高くなる、一方大手は買主が多く売れやすい
  • すまいValue

    」「

    HOME4U

    を併用して、複数の大手・中堅・中小を使うのが一番の囲い込みリスクを防げる
    ※詳細は「4.囲い込みの原因と対策」で解説しています。

株式会社グロープロフィット 代表取締役 竹内英二

【執筆・監修】不動産鑑定士・不動産コンサルティングマスター

株式会社グロープロフィット 代表取締役

竹内英二

日本土地建物株式会社にて、不動産鑑定や開発用地の仕入れ担当を11年間に渡り従事。オフィスビル・賃貸マンション等の開発も行っていたことから、土地活用・不動産投資の分野に強い。

資格不動産鑑定士・中小企業鑑定士・宅地建物取引士・不動産コンサルティングマスター・賃貸不動産経営管理士・不動産キャリアパーソン資格

1.両手仲介と利益相反の関係について

両手仲介のイメージ図

両手仲介のイメージ図

両手仲介とは、1社の不動産会社が売主と買主の両方の仲介を行うこと

それに対して、売主と買主が別々の仲介会社となることを業界用語で「分かれ」と言います。

日本では両手仲介は合法ですし、不動産会社が両手仲介を行っても問題になることはありません。

個人が売主となる不動産売却では、両手仲介が行われているケースの方が多いです。

あまりにも普通のことであるため、疑問に感じない人も多いですが、冷静に考えてみると、両手仲介は実は不思議な仲介となっています。

売買では、売主は高く売りたい、買主は安く買いたいという思惑があります。

仲介というのは、

  • 売主側に立つ不動産会社は高く売ることに尽力
  • 買主側に立つ不動産会社は安く買えることに尽力

するのが理想。

それが両手仲介となると、

  • 高く売りたい売主側に立てば安く買いたい買主を犠牲
  • 安く買いたい買主側に立てば高く売りたい売主を犠牲

にすることになります。

両手仲介は利益相反行為となる

このように、どちら一方の利益に立つと、もう一方が不利益となるような行為を利益相反行為と呼びます。

利益相反は1人が利益の真っ向から対立する双方の代理となることで発生。このような代理を双方代理と呼ぶ。

シンガポールやアメリカの一部州等、両手仲介を禁止している国もあります。

両手仲介は利益相反行為となり、矛盾した立場の仲介といえますが、両手仲介を止めて、多くの収益機会を減らすようなことには、不動産業界全体的に及び腰です。

両手仲介にしないための対策方法はこちら

片手仲介との違いについて

片手仲介のイメージ図

片手仲介のイメージ図

片手仲介とは、物件の売却依頼を受けた業者とは別の業者が買主を見つけてきた場合、買主を見つけてきた業者は買主に対して仲介業務をおこない、売却依頼を受けた業者は売主に対して仲介業務をおこなうことを指します。

片手仲介と両手仲介の大きな違いとして「売買契約を成立させるために無理な物件の値下げ交渉をする」といった売主、買主を犠牲にするようなことが起きづらくなります。

以上、ここまで両手仲介と利益相反と片手仲介について見てきました。

では、両手仲介は何が問題なのでしょうか。

2.両手仲介の問題は「囲い込み」

囲い込みのイメージ図

囲い込みのイメージ図

両手仲介の問題は売主の「囲い込み」にあります。

囲い込みとは、売主側の不動産会社が買主を囲い込むこと

両手仲介そのものは、それほど大きな問題ではありません。

売主としても高く売れた、買主としても安く買えたという結果が、たまたま両手仲介であれば問題ないはず。

売主と買主にとって、ベストな結果が両手仲介だったということはあり得ます。

両手仲介というのは、あくまでも仲介の最終的な結果であり、それが双方満足のいく取引であれば問題ないのです。

しかしながら、最初から両手仲介ありきで、売主が囲い込みにあえば、問題はあるといえます。

具体的には、売主の売物件情報を隠し、他の不動産会社からの購入申込を一切断るような行為が囲い込みです。

本来、不動産会社はレインズという不動産会社が売却情報を登録するサイトへ登録し、広く不動産会社に対して情報開示をします。

レインズの情報を見て、多くの不動産会社が購入の申込をするわけですが、「もう契約予定です」「既にお話が入っています」などと言って一切他の会社を寄せ付けないようにします。

このように、仲介業者両手仲介狙いで囲い込まれてしまうと、売り手側は不動産を高く・早く売れるチャンスを逃してしまうのです。

囲い込みは、売主にとって非常に問題となることを理解しておきましょう。

また、囲い込みを避けるための対策に関しては、「4.囲い込みの原因と対策」の章で解説しています。

大手不動産会社ほど両手仲介比率が高い

実は大手不動産会社ほど両手仲介比率が高いのです。

両手仲介とは、1社の不動産会社が売主と買主の両方の仲介を行うこと

下記は公益社団法人不動産流通推進センターで公表されている不動産仲介会社における売上(取扱高)のランキング。

上位の会社ほど手数料率(仲介手数料の比率)が高い傾向にあるのが分かると思います。

No. 企業名 取扱高 (百万円) 手数料収入 (百万円) 手数料率 (%) 仲介件数 (件) 店舗数
1 三井不動産リアルティグループ 1,706,843 85,008 5.0% 41,533 281
2 住友不動産販売 1,326,357 69,615 5.2% 37,643 270
3 東急リバブル 1,245,530 60,149 4.8% 25,570 182
4 野村不動産グループ 767,324 33,136 4.3% 8,922 86
5 センチュリー21・ジャパン 676,484 31,132 4.6% 26,787 954
6 三井住友トラスト不動産 504,218 20,656 4.1% 7,935 72
7 三菱UFJ不動産販売 414,929 17,567 4.2% 5,569 48
8 みずほ不動産販売 384,535 15,388 4.0% 4,125 42
9 三菱地所リアルエステートサービス 307,369 9,871 3.2% 1,129 8
10 大和ハウスグループ 215,957 7,001 3.2% 3,552 68
11 大京グループ 168,606 7,666 4.5% 6,580 75
12 東宝ハウスグループ 158,053 7,472 4.7% 4,708 15
13 大成有楽不動産販売グループ 148,491 6,397 4.3% 4,029 39
14 住友林業ホームサービス 137,385 6,460 4.7% 4,227 50
15 スターツグループ 113,920 5,392 4.7% 2,224 105
16 近鉄不動産 113,732 5,855 5.1% 4,349 44
17 イエステーション 102,271 5,978 5.8% 7,728 144
18 東京建物不動産販売 101,102 3,543 3.5% 1,056 14
19 長谷工リアルエステート 97,924 3,771 3.9% 2,105 35
20 三菱地所ハウスネット 73,022 2,811 3.8% 1,394 20

出典:公益社団法人不動産流通推進センター「不動産業統計集2019(2019年9月発表)

仲介手数料は下記のように法律によって上限が決められています。

取引額※1(売買金額) 速算式(上限額)
200万円以下 5%(18万円※2)
200万円超から400万円以下 4%+2万円(18万円※2)
400万円超 3%+6万円

※1取引額は、物件の本体価格をいい、消費税を含まない価格を指します。
※2空き家などの現地調査が必要な取引の場合(2018年より施行 出典:国土交通省より)

不動産売買は400万円を超える取引がほとんど。

400万円超え取引の仲介手数料の上限は、最大で3%+6万円と決まっています。

つまり4~5%になっているということは、上記表に載っているほとんどの不動産会社が取引が両手仲介になっているということです。

不動産会社の仲介ランキングについては下記記事でさらに詳しく解説しています。

【2020年版】不動産仲介ランキング決定版!オススメの不動産会社はどこ?
【2020年版】不動産仲介ランキング決定版!オススメの大手不動産会社10社を紹介

「不動産を売るなら、なるべく実績があり大手の不動産会社が良い」 これは不動産を売る多くの人が考えることです。 そこで今回 …

続きを見る

大手不動産会社は、両手仲介比率が高いとこれまで説明してきましたが、日本国内では両手仲介は合法なので何の問題もありません。

問題があるのは、両手仲介の「囲い込み」です。

不動産会社が両手仲介にこだわり、不当に物件情報を同業他社に開示しなかったり、他社経由の購入希望者を寄せ付けない対応をすることは、売主側の機会損失になります。

では、両手仲介は誰にとって有利なのでしょうか。

3.両手仲介は売主に不利で買主に有利

両手仲介は売主に不利で買主に有利となります。

両手仲介を行うのは、基本的に売主側に付いている元付業者。

客付業者は、既に元付業者が扱っている物件に対して購入の申出をするため、両手仲介とはなり得ません。

両手仲介は、基本的に売主側で端を発して起こりうる現象なのです。

例えば、元付業者が扱っている4,000万円の売り物件に、3,800万円の購入希望者が現れたとします。

3,800万円で両手仲介ができたら、仲介手数料は売主から120万円(=3,800万円×3%+6万円)、買主から120万円の計240万円となります。

4,000万円で分かれとなった場合には、126万円(=4,000万円×3%+6万円)ですので、両手仲介の240万円とは大きな違いです。

値引きしてでも売買を成立させた方が両手仲介業者は得をする

元付業者としては、値引してでも売買を成立させ、両手仲介を取った方が得になります。

そのため、3,800万円の購入希望者が現れれば、なんとか売主を説得して売買を成立させようとするのです。

このように、両手仲介を目前とすると、元付業者は買主の意向を尊重して値引してでも売買を成立させようとします。

これは典型的な利益相反行為です。

そのため、売主は値引を受けて損をしますが、買主は値引が成功するため得をするのです。

囲い込みや両手仲介の問題は、買主の問題ではなく、売主の問題といえます。

以上、ここまで両手仲介は売主に不利で買主に有利であることについて見てきました。

では、なぜ囲い込みという状態が起きるのでしょうか。

4.囲い込みの原因と対策

囲い込みの原因は専任媒介契約または専属専任媒介契約にあります。

媒介契約とは不動産会社に依頼する仲介の契約のこと

媒介契約には、「専任媒介」「専属専任媒介」「一般媒介」の3種類があります。

専任媒介と一般媒介の違い

専任媒介と一般媒介の違い

  • 「専任媒介」と「専属専任媒介」は1つの不動産会社にしか仲介を依頼できない契約
  • 「一般媒介」は、複数の不動産会社に仲介を依頼できる契約

「専任媒介」と「専属専任媒介」は、自己発見取引ができるかどうかが違います。

自己発見取引とは依頼者が自ら契約当事者を見つけてくる行為

「専任媒介」では自己発見取引は認められ、「専属専任媒介」では自己発見取引すら禁止されています。

「専任媒介」と「専属専任媒介」では、元付業者が売主側からの仲介手数料を独占できる状態であるため、囲い込みがしやすくなります。

邪魔が入りませんので、買主さえ見つけてしまえば両手仲介は成立です。

一般媒介契約にすると囲い込みを回避できる

一方で、「一般媒介」では他の不動産会社も元付業者となっていますので、売主から仲介手数料を取れるかどうかは、売買を早く成立させた早い者勝ちとなります。

仲介手数料は成功報酬ですので、一般媒介で依頼しても、売買を成立させた不動産会社のみ受領することができます。

媒介契約のイメージ図

媒介契約のイメージ図

一般媒介となると、元付業者は流ちょうに囲い込みなど行っている余裕がありません。

客付業者の協力を得て、分かれでも仲介を決めた方が得になります。

仲介手数料がゼロになるくらいなら、分かれでも仲介手数料をもらった方が得だからです。

一般媒介契約でも両手仲介は発生する可能性あり

一般媒介であっても、結果が両手仲介となることはあり得ます。

何社かに仲介を依頼し、一番高い価格の買主を連れてきた不動産会社が、結果的に両手仲介だったということもあるのです。

つまり、両手仲介イコール囲い込みではありません。

「専任媒介」や「専属専任媒介」が囲い込みの原因となり、結果的に両手仲介になるということになります。

問題視されるべきなのは囲い込みであって、その原因は「専任媒介」や「専属専任媒介」にあるということを理解しておきましょう。

一括査定サイトを使って一般媒介にする

無料の一括査定サイトを使って、査定に訪れた全ての不動産会社に一般媒介で依頼するのが一番良い方法となります。

無料の一括査定サイトなら、不動産会社も最初から他の不動産会社と競合関係にあることが分かっています。

依頼者が最初から一般媒介にするというスタンスであれば、不動産会社も割り切って対応してくれます。

一般媒介だからやる気をなくすような不動産会社は放っておけば良いのです。

気にせず、一括査定を使って訪れた不動産会社には一般媒介を依頼し、不動産を早く高く売ることをオススメします。

一括査定とはインターネット上であなたが売りたいと思っている不動産情報・個人情報を入力すると、複数の不動産会社が自動的に見つかり一度に査定依頼できるサービス

一括査定サービスの仕組み

一括査定サービスの仕組み

複数の不動産会社から査定額を提示してもらうことができ、だいたいの相場観を掴むことができます。一括査定の流れとしては下記の通り。

一括査定の流れ

一括査定の流れ

一括査定サイトのオススメは

「すまいValue」「HOME4U」

不動産一括査定は筆者が知っているだけでも30はあります。

その中でも

  • 超大手の不動産会社6社に唯一依頼ができる「

    すまいValue

  • 【1都3県・大阪・兵庫・京都・奈良】売主専門の数少ない不動産会社「

    SRE不動産(※旧ソニー不動産)

  • NTTグループで安心、一番歴史があり実績抜群の「

    HOME4U

  • 地域密着の不動産会社にも数多く依頼ができる「

    イエウール

の4つを特にオススメしています。

筆者も不動産一括査定(「

すまいValue

」「

HOME4U

」「

イエウール

」)を利用しました。

下記は「

すまいValue

」を利用して「三井のリハウス」「東急リバブル」「三菱地所ハウスネット」より、査定結果をもらった写真。

とても分厚い査定書を見ながら、3社ともに丁寧に説明をしていただきました。

不動産査定書を3社より入手

不動産査定書を3社より入手

下記表が「不動産売買の仲介件数が多い不動産会社」が「どこの不動産一括査定に参加しているのか」を調査した結果です。

少し細かいので、流し読みする程度でOKじゃぞ!

フクロウ先生

フクロウ先生

不動産一括査定×不動産会社のマッチング表

不動産一括査定×不動産会社のマッチング表

ひよこ生徒 解決

ひよこ生徒

こう見ると、上4つがずば抜けているんですね!

正確にはセンチュリー21はフランチャイズ経営なので、「三井不動産」「住友不動産」「東急リバブル」の3強じゃよ!

フクロウ先生

フクロウ先生

不動産売買は超大手に偏っている

「三井不動産リアリティネットワーク」「住友不動産販売」「東急リバブル」が超大手と言われる不動産会社です。

超大手不動産会社3社で不動産仲介の約30%のシェアを持っています。つまり、不動産売買した人の中で3人に1人は、「三井不動産リアリティネットワーク」「住友不動産販売」「東急リバブル」のどこかに仲介を依頼していることになります。

それだけ日本の不動産売買は、超大手不動産会社に偏っているということ。

超大手不動産会社は販売活動に強く、豊富な買主を持っており、売りやすいとも言えます。

そしてこの3社に唯一依頼できるのが「

すまいValue

」です。なので「すまいValue」は外せません。

超大手不動産会社だけではなく大手・中堅・地域密着の会社とも比較する

ただ、超大手だけで満足してはダメ。不動産業界は特殊な縄張りなどもあり、A地域はX不動産が強い、B地域はY不動産が強いということが存在します。

また、超大手になるほど両手仲介の比率が高まります。

両手仲介とは、1社の不動産会社が売主と買主の両方の仲介を行うこと。買主と売主から手数料をもらえるため、利益相反の関係になる。アメリカは両手仲介は禁止されています。

売却を成功するためにも超大手不動産会社と併せて大手・中堅や地域密着の不動産会社も比較することをオススメします。

その場合は下記のような使い分けがいいでしょう。

不動産一括査定の賢い使い方

不動産一括査定の賢い使い方

不動産一括査定の賢い使い方

売らなくてもOK!簡易的な机上査定&メール連絡も可能

紹介したサイトは、簡易的な机上査定も可能です。

また、イエウール以外は備考欄を設けており「メールでの査定額提示を希望」の旨を記載することで、不動産会社に伝わります。

ご要望・ご質問の欄にメールでの査定額を希望

ひよこ生徒 困り

ひよこ生徒

どの一括査定なら「机上査定」「メール要望」が使えるんですか?

下記に比較してまとめてみたぞ!

フクロウ先生

フクロウ先生

一括査定 机上査定 備考欄

すまいValue

HOME4U

イエウール

 

SRE不動産(※旧ソニー不動産)

一括査定サイトについては下記記事でさらに詳しく説明しています。

不動産一括査定
不動産一括査定サイトは怪しくない?評判とデメリットを紹介

不動産一括査定サイトのオススメを先に見たい人はコチラ マンションや一戸建て、土地などの「不動産を売りたい」と考え始めたと …

続きを見る

媒介契約については下記記事で詳しく解説しています。

不動産売買時に締結する3つの媒介契約(一般・専任・専属)と特徴・違い
一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の特徴とそれぞれの違い

媒介とは仲介やあっせんのこと 一般的には仲介と言うことの方が多いですが、法律用語で仲介のことを媒介と呼んでいます。 こん …

続きを見る

まとめ

両手仲介とは何かということや、売主が取り得る防衛策について見てきました。

両手仲介そのものは問題ではありませんが、囲い込みは問題といえます。

囲い込みを防ぐには、一括査定サイトを使って全社に一般媒介で依頼するのが一番合理的。

囲い込みは一般媒介で防げますので、しっかりと売主に有利な媒介契約を選択するようにしましょう。

Copyright © 2020 不動産売却の教科書 All Rights Reserved.

Source: 不動産売却の教科書